無能アルビオンと超有能グリーン・ワイアット大将【0083】

魅力的なキャラクターが多い(ようで割りと全員クズな)機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY

なかでも、核攻撃により戦死したグリーン・ワイアット大将が無能と評価されがち。実際そういうふうに描かれているから仕方ないんですけど。

しかし実態はむしろ逆。グリーン・ワイアット大将こそが超有能で、超無能で疫病神な某アルビオンの連中が足を引っ張りまくったのが問題だった。

責務を果たしたがゆえの戦死

グリーン・ワイアット大将を無能とする根拠のひとつとして、観艦式への核攻撃を阻止できず壊滅的な被害を受けたことが挙げられます。

しかし、結果的に大被害を受けましたが、当時の連邦軍に観艦式を中止する選択肢はありません。核弾頭の矛先がどこに向かうかわからなくなるからです。

その点、連邦軍艦隊が観艦式で囮になれば、月面都市やコロニーなど民間に被害が及ぶリスクを減らせます。それに本来、テロでなく戦闘になれば防衛線突破なんて夢のまた夢ってレベルの戦力差なのです。ガトーがチートだっただけ。

そもそも、核攻撃の原因は某アルビオンの度重なる失敗にあります。

結果として連邦軍は大被害を被ることに。しかし、それでも連邦軍の優位は揺らいでいません。グリーン・ワイアット大将以下連邦軍艦隊は命を賭した囮役を全うし、敵の切り札を使わせたのです。

そもそもデラーズ・フリートが核攻撃の手段を得たのも、後述する星の屑作戦の情報を手に入れられなかったのも直接的に某アルビオンの責任。

末端の尻拭いで命を落としたグリーン・ワイアット大将はどちらかといえば被害者。彼を無能扱いで、戦略的にはなにひとつ貢献していないアルビオンを評価するのはいろいろ間違っている。

星の屑作戦の先も見据えての密会

さらに、グリーン・ワイアット大将はただ戦力差にあぐらをかいて待ち構えるだけの無策な男ではありません。

観艦式の防衛網構築を進めつつ、星の屑作戦の情報を得るためシーマ艦隊との密会を画策。

この辺りはバニング大尉の戦死によるアルビオンクルーの団結が見せ場になっていますけど、正直パイロット一人の戦死なんかどうでもいいほど、シーマ密会は戦略上非常に重要なイベントでした。

星の屑作戦の情報さえ手に入っていれば核の惨劇も余裕で阻止できただろうし、続くコロニー落としの標的もわかっているので、追撃艦隊が進路に振り回され推進剤切れで戦線を離脱することもなかった。

真の無能は核を奪われたうえでその尻拭いすら邪魔したアホども、某アルビオン隊なのです。

バーミンガムが無能の証??

観艦式でグリーン・ワイアット大将が座上した戦艦バーミンガムがモビルスーツ搭載能力を持たないため、「一年戦争でモビルスーツの重要性を学んでいない」として無能説の根拠として語られることがあります。

(小説版でもバーミンガムは「連邦の大艦巨砲主義を体現している」的な書かれ方をしていたような)

しかしそれは安直な考え。モビルスーツ運用なんぞ随伴艦に任せればいいだけの話なのです。

バーミンガムは旗艦として艦隊全体の指揮能力と火力に特化した艦。艦隊で役割分担し、モビルスーツの運用はほかに任せればいい。貧乏なジオンじゃないんだからそれぐらいしてもよか。

なお、グリーン・ワイアット大将は劇中で「モビルスーツのない艦隊がどうなるかを教えてやる」と発言しており、モビルスーツの有用性を無視していたどころかむしろ的確に評価していたといえます。

真の無能は……

逆にいえば、バーミンガムが単艦行動し、戦略的に価値のない海域でジオンの艦艇に接近した状況は尋常ではありません。

その裏にある意図を読み取ろうともせず、「救援」と称して脊椎反射で突撃したおバカな艦こそ真実無能なのではないでしょうか。ちなみにその艦がやらかしの書き出すとこんな感じ。

  • 核弾頭を装備したガンダム試作二号機を奪われる
  • ガンダム試作二号機の宇宙打ち上げ阻止失敗
  • デラーズ・フリートの拠点捜索に失敗し僚艦も全滅
  • 密会を台無しにし、星の屑作戦の全容把握の機会を潰す
  • 核バズーカの発射阻止失敗
  • 友軍の最新鋭機を奪取、命令を無視して無断出撃
  • 友軍にまわったシーマ艦隊を撃滅
  • 試作二号機の開発を推進した後ろだての上官はジャブローでぬくぬく

この連中、アルビオンっていうんですけど。

度し難いですねえ。

if:グリーン・ワイアットが生きていれば

0083はファーストガンダムとZガンダムの間をつなぐ、いわばティターンズ誕生に向かう地球圏の物語。

しかし、もしグリーン・ワイアット大将とシーマとの密会が成立、星の屑作戦の阻止に成功し生存していたなら、ティターンズの誕生はなかったかもしれません。

グリーン・ワイアット大将もタカ派ではありましたが、ジャミトフとは異なる独自の派閥を持っていました。

彼が戦死しなければティターンズは設立されず、もし設立されてもカミーユやジェリドがあれほど悲惨な目に遭う未来はなかったかもしれません。

デラーズ・フリートの真の目的は、北米の穀倉地帯にコロニーを落として地球の食糧生産能力を下げること。

食糧面でコロニーへ依存させ、スペースノイドの発言力を高めようと考えたのです。

しかし、コロニー落としには成功したものの、ジャミトフ・ハイマンが巧みに連邦軍内部と世論を誘導し、より積極的にジオン残党を一掃することを口実に過激な組織ティターンズを設立。

(別派閥だったグリーン・ワイアット大将の死、コーウェン中将の更迭のためブレーキもかからなかった)

却ってスペースノイドが強い迫害を受ける土壌をつくり、結果的にエゥーゴの登場と内紛によりアクシズ=ネオジオンが台頭するスキを生む事態に。

グリーン・ワイアットの戦死により状況はまさしく、「勝利者などいない」事態へと発展していったのです。

まとめ:グリーン・ワイアット大将こそ真の有能

実際グリーン・ワイアット大将がどのような思想の持ち主かは不明です。生存していたとしてその後どのような展開を迎えたかは具体的な予測は難しいところ。

しかし少なくともジャミトフほど強烈な思想ではなかったと思っていいでしょう。実のところジャミトフは逆襲のシャア時代のシャアにも似た危険思想の持ち主ですから。

もし某アルビオンの面々があそこまで無能でなければ。もし星の屑作戦が阻止できていれば。もしグリーン・ワイアットが生きてさえいれば。

地球圏ももっと静かでいられたのではないだろうか、と考えずにはいられません。